3 グローバル化した自己 因習的な経済小説と違い、いわゆる純文学は新たな方法論を提示することで文学に寄与する。けれども、少なくとも、この一年間に発表された若手の小説を読む限り、ヘンリー・ジェイムズに舞い戻り、それを超えるものでもない。一例として挙げると、喜多ふありの『けちゃっぷ』や安戸悠太の『おひるのたびにさようなら』は、テレビやインターネットを用いながら、真偽をめぐる想像力の問題を扱っている。 いかに新奇な大道具小道具を使っても、ヘンリー・ジェイムズを知る読者であれば、ずいぶんと古典的な作品だと思わずにはいられない。ヘンリー・ジェイムズは中期の作品群において想像力の問題をテーマに据えている。まず、『ねじの回転』(1895)はアルフレッド・ヒッチコックを思い起こさせるサスペンスである。お屋敷で愛らしい子供たちを教えることになった女性家庭教師は、あるときから死んだ下男たちの幽霊を見るようになり、監督を強化するが、実は、それが彼女の妄想だったのではないかという真偽の決定不能性を巧みに描写する。また、彼は、『ほんもの』(1892)において、肖像画とモデルとの関係を再考し、『じゅうたんの下絵』(1895)では、ヒュー・ヴィアカーの小説の本質を見逃していた批評家によるその謎解きを描いている。むしろ、現代の読者にとっては、ヘンリー・ジェイムズの方が新鮮に感じられるかもしれない。続きをみる
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戦後経済と日本文学(2)(2009)
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