2015年11月13日の記事『「福島甲状腺がん50倍」論文に専門家が騒がぬわけ・1』の再掲です。
越智小枝
相馬中央病院 内科診療科長
先日、ある学会誌に「福島の子供たちの間で、甲状腺がんが他の地域の20-50倍上がっている」という論文が受理されたようです。(注1)最近になり、この論文が今でも世間で物議をかもしているという事を聞き、とても驚きました。なぜならこの論文は、多少なりとも甲状腺やスクリーニングの知識のある研究者の間ではほとんど問題にされないものだったからです。
しかし、このような研究者の態度がジャーナリストの反応とあまりにかい離しているために、むしろ
「福島の研究者が不当に真実を隠している」
という誤解も生んでいるようです。
なぜこのようなかい離が生まれたのでしょうか?
ひとつの理由は、統計や疫学、甲状腺がんやスクリーニングに関する知識の違いの差があります。もうひとつの理由は、研究の妥当性と政府に対する批判の妥当性が混在してしまっていることがあるように思います。
ここではまず論文の限界について述べた後、この論文が報道される背景について少し意見を述べさせていただこうと思います。
科学論文の限界
そもそも統計学だけで因果関係を示すことはできない。そのことは別稿にお書きしていますのでお読みいただければと思います。(注2)
その上で、まずこの論文は、主に3つの点で克服できない問題
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【GEPR】福島の甲状腺がんの本当のリスク
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