『東京ルポルタージュ 疫病とオリンピックの街で』
コロナ禍でのオリンピックという、人類初の事態を経験することになった東京。街ゆく人は激減し、繁盛店からも灯りが消えた。様変わりした見知らぬ都市で、多くの人が不安を抱いていた。
ノンフィクションライター石戸諭氏は、異常事態に見舞われたこの都市で暮らす人たちの姿を丁寧に追いかけ、31のショートストーリーを紡いで『東京ルポルタージュ 疫病とオリンピックの街で』(毎日新聞出版)という一冊の本にまとめた。
ライブハウス、飲み屋、ゲイバー、劇場、レストラン、テーラー、大学……。大混乱に陥り、機能不全に陥った都市を目の当たりにした彼は、いったい何を描こうとしたのか。しばらくぶりに連絡を取り、直接聞くことにした。(聞き手:渡辺一樹)
東京で何が起きているのか、わからなかった。
――今回の本には、この間「自粛」に揺れた繁華街、歓楽街の水面下で、ひっそりと起きていた出来事が丁寧に描かれていて、かなり新鮮だった。
それは嬉しい感想ですよ。みんな自分の身の回り以外のことは、知る手段もなかったし、知る余裕もなかった。多くの人が自分の周囲だけで手一杯だったと思う。メディアも特定の問題は取り上げても、東京で生活をしている人たちの日常はどうしても手薄になってしまう。
僕も何が起きているかわからないから、あちこち見て回って、いろんな人に話を聞いて、やっとちょっと見えて
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