GEPRフェロー 諸葛宗男
はじめに
本稿は原子力発電の国有化があり得るのかどうかを考える。国有化のメリットについては前報(2018.5.14付GEPR)で述べた。デメリットは国鉄や電電公社の経験で広く国民に知られているが、本稿でおさらいをする。問題はそれを承知しながら、なぜ国営化を検討するのかという理由と国営化のマイナス面を如何に抑えるかである。国営化を考える最大の理由は事故処理費用が莫大だということである。福島第一事故の処理費用は約22兆円と言われている。いくら安全対策を強化しても事故の可能性はゼロにはならない。だから事故処理費用は考えておかねばならない。将来起きる事故は福島事故より影響は小さくなるだろうが、半分としても11兆円にもなる。エネルギー確保は日本の経済発展に不可欠だという事を考慮すると、そのリスクを覚悟することはやむを得ないだろうが、民間企業がそのリスクを覚悟するのは荷が重い。それが国営化を考える理由である。もう一つは使用済燃料の最終処分場問題である。安全になるまでの管理期間が100万年と極めて長いのが国営化を考えた理由である。
国営化の第一のデメリットは独自の経営判断が出来なくなること
原子力発電所が国営化された場合、所有者が政府になる。したがって人事異動は政府主導で決められることになる。35基の原子力発電所を統括するのはこれまで10人の社長だったが、国営化後はそ
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