柴田錬三郎さんの「大将」を拝読しました。
シベリア抑留から命からがら故郷・松山に戻り、映画興行を手はじめに、来島どっくや佐世保造船の再建、奥道後温泉の開発を手掛けた坪内寿夫さんをモデルにした小説です。
ちょうど40年前(1978年発刊)の本ですが、色褪せないどころか、戦後の混乱期、高度経済成長期だからこそのダイナミックさ、スケールの大きさがひしひしと伝わり、一気に読みました。
冒頭。シベリアから引き揚げ、広島でたまたま出会った小説家とのやり取りが印象に残ります。
小説家「貴方は、これまで、人を憎んだことは、一度もないのじゃありませんか?」
野呂内大太郎(坪内寿夫)「ありませんな。憎まにゃならんような奴に出会わなかったのかも知れんです。」
小説家「人を憎めないように生れついているのですよ。貴方は」
野呂内大太郎(坪内寿夫)「いやぁ、憎みはせんけど、敵にまわしたら、わしは、徹底的に闘うことができますよ。」
映画館建設のための建設省100日詣で、私財を投げうっての奥道後温泉の開発など、やり抜く、やりきる、やり遂げることの力強さ、そして、泥棒を映画の支配人に雇うなど懐の大きさを感じる本でした。
一方で、40年後の現在から振り返ると、坪内寿夫さんが亡くなった後、ホテル奥道後は経営破たん、金閣寺を模した錦晴殿は台風で流出したことから、織田信長亡き後の安土(滋賀県)の衰退や、風景に合わない
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柴田錬三郎「大将」
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