人によっては、世界の技術のリーダーシップはアメリカからヨーロッパおよび極東のライバルの手に移ってしまったという。アメリカの企業組織に批判的な人びとは、多くの新しい製品およびサービスが海外――とりわけ日本――で生まれていることを指摘し、アメリカにおけるイノベーション沈滞の責任を、その肥大化し、かつ官僚的な組織に求めようとする。かく論評する人びとによれば、もしアメリカにイノベーションが生まれ出るとするならば、それはなによりもます企業家と中小企業によるものであろうという。
指導的な経営学者である本稿の著者は、これとは異なった立場をとる。大企業でも、イノベーションのプロセスを理解している企業では、新しい技術と製品の開発について注目すべき実績を示している。多年にわたるある調査プロジェクトや数多くのケース・スタディを例証することにより、著者は、成功している大企業の経営慣行を分析し、技術イノベーションに対するそのアプローチに共通するいくつかのパターンを概括する。こうした巨大企業は、多くの成功中小企業家と同様、開発とは本質的に混沌であることを受け入れる。彼らは、顧客のニーズと要求に対して緊密な関心を保ち、技術面、マーケティンク面ともに詳細なプランを早期に設定する拙速を避け、そして企業家的チームに対しては、目標と制限についての明確に意識された枠組みのなかで、競合する代替案を追及することを許容する
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