最近のアメリカ経済の回復の影に隠れて、産業政策の提唱者の主張に耳を傾ける者は少なくなっている。もしも、現実に経済的問題が存在していないとすれば、経済政策立案の方向を大幅に変更する必要は何もない、と批判者たちはいう。しかし本稿の指摘によれば、この景気回復は、長期持続的な転回点を示すものというよりも、せいぜい国内的かつ消費者主導による短命な現象に過ぎない。1960年代末に最初のきざしが現われたわが国の競争力低下の問題は、現在もまだ解決していない。わが国の輸出ポジションは、全面的に、しかもハイテクの分野においてすら後退を続けている。
マッキンゼー賞受賞のHBR論稿、“福祉国家において産業は存続可能か?”(1982年9-10月号)をフォローアップする本橋において、著者は、わが国の経済問題が現在の政策の枠組のなかで運営可能であるとする主流派エコノミストたちの論点に検討を加えている。
彼らが経済をみる際の理論構造のなかに問題の一部が秘んでいる。例えば比較優位論は、ほぼ200年も昔の世界観にその基盤を置いている。同氏は、今日の世界においては、(日本がそうしたように)比較優位の方向を転回することが求められていると主張する。また、同様のアプローチによってアメリカが経済戦略を打ち建て、それを実行するにはどうすべきかを示唆している。
Source: ハーバード
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