2008年に起こった世界的な金融危機は、各国政府や中央銀行の対応により、ひとまず収束した。現段階では、学ぶべき教訓について定まった結論は出せないものの、経済やファイナンスの世界では確実に変化の兆しが見られる。特に、マクロ経済学者がファイナンス理論にも注意を向け始めたこと、ファイナンスでは市場や経済全体への影響を加味したより広い視野からの研究が出てきたこと、産業界への経済学者の影響力が弱まってきたことが指摘できる。本稿では、1929年の世界恐慌以降に登場したマクロ経済理論を振り返り、今回の危機にどう役立ったかを検証するとともに、今回の金融危機の前後でファイナンス研究にどのような変化が見られ、それが金融システムの安定に向けた取り組みにどう活かされているか、さらには、企業経営における経済学の影響とその限界にも言及する。
Source: ハーバード
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