新古典派理論では、マクロ貯蓄が資本蓄積率を決定するのであってその逆ではない。これは、マクロ需給バランスが常に均衡するセイ法則から帰結する。この新古典派の基本方程式を認める限り、短期的には労働分配率と資本蓄積率はトレードオフ関係にある。他方、労働分配率の構成要因である実質賃金率の上昇率は労働生産性が上昇すればするほど大きくなる傾向がある。この二つの条件が仮定される場合、新古典派モデルの長期均衡(実質経済成長率は生産労働人口の増加率プラス技術進歩率に一致する)は不安定になる可能性がある。この命題を再検討することが、今回の目的である。 これまで詳述してきた、成長と分配に関する新古典派の基本方程式から始めることにする。筆者が分析の道具とする新古典派の基本方程式は、前述したように、財市場の均衡条件にセイ法則を仮定する単純な方程式である。議論は、閉鎖経済を仮定する。開放経済の条件を追加すれば、純輸入の増加はこの新古典派トレードオフ関係を緩和する。それは、純輸入はそれだけ外国貯蓄の移転を意味するからである。純輸入が自国通貨高によってもたらされるとするならば、新古典派理論では、自国通貨高は、成長と分配のトレードオフ関係を緩和する可能性がある。 続きをみる
Source: Note 起業ニュース
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「成長と分配」no.21
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