「成長と分配」no.16
経済成長率と労働分配率の関係についての新古典派モデルの含意 政府が民間の事業に様々なルートで介入してくることを嫌い、民間企業の競争や市場にまかせることを主張される経営者(特に起業家)は多い。こうした経営者の思いの正当性は、経済学では概ね新古典派理論が根拠づけている。岸田政権が登場して以降、成長と分配の好循環を生み出すことが、日本経済再生の中心的課題となった。そして、この問題提起が歴史上初めてでないこともよく知られている。いずれも時代の転換期に提起されたと思う。にもかかわらず、新古典派とケインズ派の二大学派がこの問題についてどのような解答を用意しているのかなど、政治の世界では、歯牙にもかけていないように思われる。筆者の表題の連載は、この問題の論点整理を初等経済学の力を借りて行うことを目的としている。すでに、15回が蓄積されている。 単純な新古典派マクロ経済成長モデルを使って、今回は、開放経済における経済成長と労働分配率のトレードオフ関係を分析しておこう。今時、開放経済を想定しなければ、有意味な分析ができないことは明らかである。閉鎖経済の分析は、この問題が開放経済を想定しなくても、資本主義経済固有の問題であることを示すうえでは、依然として重要性を持つことは明らかであるが。対象を開放経済に拡張すると、マクロ貯蓄が資本蓄積を決定することを核心的命題とする新古典派理論でも、このトレードオフ
コメント