【美術・アート系のブックリスト】西田陽介著『地域と芸術文化投資』大学教育出版
著者は岡山大学大学院の准教授。美術館や芸術祭といった文化事業の運営について、問題点を整理する目的で書かれたもの。地域のブランディング、マネージメント、地方美術館の経営や資金調達、企業メセナなどを、いくつかの事例と他の研究者の論文、報告書などのデータで検討していきます。ここから感想。美術館の経営が税金や補助金に頼っていることや芸術祭も多くが自治体からの負担金で賄われていることはよくわかったのだけれども、ではどうすればそうした文化事業がもっと稼げるのかについては考察されていません。「美術館や芸術祭で収益を得る必要はないのだが・・・」という前置きが頻繁に登場するところを見ると、収支が合うことは大事ですが、そのためのマネタイズにはそもそも関心が薄い、もしくは研究対象ではないのでしょう。クラウドファンディングの事例紹介、デジタルマーケティングの一例としてのインスタやツイッターのフォロワー数の内外美術館の比較などは基礎資料として面白いが、それをどう生かすかについては論じられていないようです。要するに将来への展望や進むべき方向性が示されていないので読んでいてモチベーションが湧かないというか、どこまで読んでも結論らしきものがでてこないのが残念。分析と整理に徹しているといえばいえます。いくらファクトを積み重ねても、それを「読む」力がなければ空論になるという、あらゆる「研究」に共通する特性を、この本か
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