第12回「数字を疑うチカラ」
【ポイント】* 某ブロックバスターに関連する臨床研究の論文撤回は、医師と製薬企業の複雑な内情を反映している。* 有力製品の販促に使用されている各種エビデンスについて、MRは有利な数字を鵜呑みにせず、批判が可能なスキルを備えるべきだ。* 誤りを排除するための自浄能力が医療界には必要だが、現在は製品中心の商業主義に偏りすぎている。◆ 昨今の疑惑から見える実態 毎日新聞社の積極的な報道にあるように、某ブロックバスターの強力な疾病予防効果を示唆する複数の論文が、急に撤回される事態となった。KOL待遇を受けていた大学教授の辞任劇に加えて、販売元の製薬企業から投入された億単位の奨学寄付金が販促に有利な試験結果を導いたのでは?と疑われており、大きな注目を集めている。 日本で年間約1200億円を売り上げる有名医薬品についての、なにやら不可解な話である。科学的な証拠が揃いつつあるという良いイメージを抱いて、診療中に処方した医師が多数いるであろうし、担当MRが持参した色鮮やかな製品パンフレットを思い出す者も少なくないはずだ。続報によると、同時期に他大学のKOLたちが主導した臨床研究でも、疑念が生じた事態となっている。助言役とはいえ、統計解析に製薬企業の現役社員が関与することの是非についても、賛否が分かれるところだ。 撤回された複数の論文が、どのような“重大な問題”を含んでいるかの詳細は報道機関に任せる
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