労働基準法は労働者保護の見地から、賃金は必ず通貨(現金)で払うことを雇用主に義務付けている。しかし、これには大きな例外があり、いまではそれが当たり前となっているのが、給与の口座振込だ。
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私は、国家公務員の給与口座振込が始まった翌年の1975年に役所に入った。その頃はATM(当時は預金の引き出し機能だけでCDと呼ばれた)は、まだ現在ほど多く設置されておらず、給与の一部は現金で渡されて残りが口座に振り込まれた。それがやがて全額口座振込になった。
給与の現金支給は、経理担当者にとっては大変な負担で、給料日ごとに銀行に行って必要な券種の紙幣や硬貨を受け取り、それを持ち帰った後は各人の給料袋に1万円札のほかに1000円札を適度にまぜて1円の単位まで間違わないように袋詰めする作業に追われたものだ。
銀行の方も、給料日には役所の要望に応じて1万円札、1000円札のほか様々な硬貨をそれぞれ必要枚数用意して、役所の経理担当者に手渡す手間が大変だった。これは役所だけでなく企業においても同じく大変な作業だったと思う。
この手間とコストが減ったことは、経済的に大変有意義なことだった。2003年には全銀協が、国家公務員の給与の全額振込化を推進するように政府に要望書を提出し、政府でも各省庁の尻たたきをして現在では100%近くが口座振込となっている。完全に100%にならないのは、法律上給与の口
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