先日ひょんなことで、千駄ヶ谷のあたりをクルマで移動していると、「新国立競技場」がすでにかなり建ちあがっていて、なかなかの壮観だった。かつての国立競技場に比べると圧倒的なマス感というか、巨大であることは間違いない。
しかしながら、当代随一の売れっ子建築家で、「負ける建築」を標榜する隈研吾氏設計だけのことはある。五重塔のごとく軒が張り出し、その軒の裏側に木を貼った独特の意匠が温かみを感じさせ、意外なほどに圧迫感がない。そして、間違いなく氏が得意とする「日本」を感じさせるデザインである。
新国立競技場(筆者撮影)
紆余曲折あった、隈研吾氏案に行き着くまで
そんな感想を持ちながら通りすがっていると、そういえばとここに至るまでの「新国立競技場」建設を巡る波乱万丈と言ってもよいような曲折を思い出さずにはおれなかった。
そもそも2020東京オリンピックを招致するにあたって、国立競技場を建て替え鳴り物入りの国際コンペに勝利したのは故ザハ・ハディッド氏だった。アンビルトの女王とも呼ばれたハディッド氏は、イラク生まれの女性という建築界異例のバックグラウンドもさることながら、異名通りその独創的すぎるデザインゆえにコンペで勝っても実際に建築されることが少ないことでも知られていた。
まさに彼女らしさ満点の「新国立競技場」案は、宇宙から舞い降りたようなデザインがインパクト抜群で、初めて見たときは圧倒されたもの
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