競争は革新を生まない、競争は革新を育てる
競走という競争は、人の足を速くするだろうか。仮に速くするとして、それが革新だろうか。世界記録を更新することは、誰かとの競争だろうか、それとも絶対的数値へ向かう孤独な自己との戦いだろうか。記録更新の主因は、肉体的な力の改善だろうか、それとも、知的な走技法の創意工夫だろうか。
革新は、他人との比較における単純な競争ではなく、自己との戦いにおける知的創造から生まれる。人間の知的成長こそが、真の経済成長の動因なのだ。そこには、無限の可能性がある。人口減少の日本でも、知的には、いくらでも成長できる。
知的創造の営みは、芸術家の営みと同じだ。そこに競争という用語を用いることは、適当ではない。しかし、競争は、自由で公正な競争である限り、革新の芽を生むことはなくとも、革新の妨げになる不公正な行動を排除することにより、革新の芽を育む。競争というのは、知的革新を阻害する行為の排除のことである。
世界記録更新が革新なら、それが知的な創意工夫に基づくからであり、自分自身との戦いだからである。この革新を阻害するものは、例えば、陸上競技の規則を決める団体に不当な政治工作をして、自己のもつ記録が破られないように、自分に有利な規則改定をさせて、他人の新記録を無効にしてしまうような活動であろう。
このような不当な行為が可能であるためには、規則をも支配するような優越的な地位、まさに独占的地位が必要である。公正かつ自
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