私は「がん治療革命」を起こしたいと考え、日本に帰国した。「革新」でも「改革」でもないことに重要な意味を持っている。フランス革命、ロシア革命に代表されるような革命では、短期間で社会体制がひっくり返った。それ以前の王朝が木っ端みじんに粉砕されたのだ。産業革命では、産業の在り方が一変するような変化が起こった。
今、がん治療分野に必要なのは、緩やかな改革、つぎはぎだらけの改革(私には改悪のように見える)ではなく、科学的な治療法評価システムの転換、がん治療供給体制の抜本的な見直しだ。20世紀のがん治療は、患者さんが苦しんでも、物理的な生存期間の延長が統計学的な有意差をもって示されれば、治療薬として承認されてきた。そして、その延長線上に標準療法が確立されてきた。特に、再発がんに対しては、治癒を目的とするのではなく、わずかな生存期間の延長がゴールであった。
免疫チェックポイント抗体やCAR-T細胞といった免疫療法の開発で、長期間のがんの進行抑制や治癒を目指すことが夢物語ではなくなってきた。このような状況下では、やはり、QALY(Quality Adjusted Life years=質調整生存率)といった観点で、がん治療のあり方を根底から見直すことが必要だ。もともとは費用対効果を判定する指標として利用されていたものだが、患者さんの人生の質を判定する指標としても用いられるようになった。
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