NHKニュースより:編集部
今から50年以上も前に刊行された『タテ社会の人間関係』は、日本人による日本
人論の嚆矢であり、21世紀の今に至るも名著の誉れ高い傑作である。その著者で
ある元東大教授・中根千枝氏にお目にかかる機会があった。20年も前のとあるパ
ーティの席上である。学生時代に読んだ『タテ社会の人間関係』にいかに感激し
たかを言葉に詰まりながら伝える筆者に対し、中根氏はその目に豊かな微笑みを
浮かべながら一言こう仰った。ああ、あれね、あれはもう古いのよ。
断じてそんなことはない! 女子レスリング、アメフト、水球、ボクシング、そ
してチアリーディングと、このところ大きなニュースになっている我が国スポー
ツ界の一連のスキャンダルを思い起こせば、多くの人がそう思うであろう。どっ
こい、タテ社会は今も脈々と生き永らえていると。日本ボクシング連盟の某氏を
見よ。彼こそ、そのタテ社会に君臨するトップではないか。
さて、その彼がなぜこれほどまでの絶対的な権力を持つに至ったのかという、今
回の問題の核心とも言える重要な指摘をしたのは、早稲田大学の友添秀則氏であ
る(読売新聞2018/8/9朝刊)。本稿では体育会気質というキーワードからこの問
題について少し考えてみたい。
ここに面白いデータがある。ある民間企業が実施した、体育会の価値に関するア
ンケート調査で、「部活(体育会)を通して身につ
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