制約を突破の動力源にしよう
80年から90年代にかけて成長期だった僕は、いつもチーズばかり食べていた。本物のチーズじゃない。チージー、スラングで安っぽいものの意味だ。安っぽい歌。安っぽいミュージックビデオ。安っぽい映画。安っぽいテレビドラマは言うまでもない。
安物のプロセスチーズ棚にひとつだけ、ラ・マンチャのマンチェゴチーズを思わせる魅惑的なドラマがあった。1985年から92年まで米国で放送されたオリジナル版「冒険野郎マクガイバー」だ(2016年制作リブート版も好評)。リチャード・ディーン・アンダーソン演じる主人公は、秘密機関工作員。厄介な状況を知識とクリエーティビティーの力で切り抜けるのが、毎回見ものだった。
あるエピソードで脱出の必要に迫られ、蜂の巣になった中古ジープを見つける。針金を使ってエンジンをかけるが、ラジエターが穴だらけ。水をたっぷり注いで沸騰させ、近くの鶏小屋からくすねてきた卵の白身を放り込む。白身は凝固し、うまい具合に穴をふさいでくれた。まんまと脱出成功! 別のミッションでは、自動車部品からバズーカ砲を作ったことさえあった。
このシリーズには独創的な装置がいたるところに登場する。マクガイバーは仕掛けの原理を科学的に解説してくれる。どんな制約があろうと困難を回避し、目標を達成する信念があるのだ。持てる知識をフル動員し、それを使いこなすクリエーティビティーがあればい
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