日銀の若田部副総裁が国会で、日銀による長期国債の買い入れについて「物価2%目標の実現に向けた金融政策上の目的で行っている」とし、「政府による財政資金の調達を助けることを目的とする、いわゆる財政ファイナンスではない」と語った。これは彼の過去の言論と矛盾する。
彼は『ネオアベノミクスの論点』で、「デフレからの脱却には、財政ファイナンス的な政策がじつはもっとも効果的なのです」(p.96)と書いた。財政ファイナンスが効果的なら、日銀がそれをやらないのは職務怠慢である。財政ファイナンスで日銀が国債をすべて買えば「無税国家」ができ、納税者もハッピーだ。
これは理論的には、必ずしも荒唐無稽とはいえない。若田部氏がいうように、政府と日銀の統合政府のバランスシートで考えれば、日銀が国債を買うのは子会社が親会社の社債を買うようなもので、連結の債務は増えないから、政府と日銀の債務を区別する理由はない。
だが、その意味は彼がいうのとは逆である。彼は「国債には金利がつくが日銀券は無利子だ」と考えているが、これは錯覚だ。日銀の債務を保証しているのは政府なので、金利上昇(国債の暴落)で日銀が債務超過になったら、一般会計から資本注入が必要になる。
そのスケールは金利2%で50兆円だが、日銀の保有資産は時価評価しなくてもいいので、問題は先送りできるかもしれない。この場合は市中銀行の「取り付け」が問題だが、それも日銀
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財政ファイナンスの何が悪いのか
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