世の中には「日本だけ成長していない」と思い込んでいる人が多いようだ。それを根拠に「もう成長できない」とか「脱成長」という人々がいる一方、「財政出動でもっと成長しろ」という人々もいる。これは本当だろうか。世界経済のネタ帳で調べてみよう(原データはIMF)。
まず名目GDPを比較すると、アメリカの成長率が圧倒的に高いが、これは1980年から2016年までに人口が1.44倍になったからだ。同じ時期に日本の人口は1.08倍で、2007年からは減少に転じた。実質成長率はおおむね日本の潜在成長率に見合っており、財政出動で嵩上げしても一時的な効果しかない。
この人口増加率の違いを補正して一人あたりGDPを比較すると、次の図のように日本はアメリカの7割程度だが、フランスやイギリスと同じぐらいだ。OECDの平均程度で、特に高いとはいえないが、イタリアのように深刻な低迷に陥っているわけでもない。
これを見ても明らかなように、日本の成長率が下がった最大の原因は、高齢化と少子化による労働人口の減少である。だから低成長を悲観する必要はなく、今後も一人当たり1%程度の成長は維持できる。高齢化も人口減少も、それ自体は悪いことではない。
しかし「脱成長」でゼロ成長にするわけにはいかない。今の社会保障が、成長を前提にしているからだ。政府の社会保障見通しも今後20年で平均1.8%程度の名目成長率を想定しており、ゼ
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