人生は運で決まる:『ダーウィン・エコノミー』
ダーウィン・エコノミー:自由、競争、公益
ロバート・H・フランク
日本経済新聞出版社
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人生が運に左右されることは多い。あなたが就職の面接で失敗していたら、今の会社には入れなかったかもしれない。デートのときケンカ別れしたら、今の妻(夫)と結婚していなかったかもしれない。こういう初期条件はやりなおし不可能で、それを前提にして人生を最適化する。
運が非科学的だと思うのは、科学を必然的な「法則」の同義語と考える19世紀的な発想だ。量子力学では、素粒子の状態は確率的にしか決まらない。生物学でも、カタツムリの殻が右巻きか左巻きかをアプリオリに決める法則は存在しないが、他のカタツムリがすべて右巻きだと、左巻きの個体は生殖できない。
ニュートンの同時代人だったアダム・スミスは、古典物理学をモデルにして経済学を構想した。ニュートン力学の重要な結論は、世界には唯一の均衡状態(力学的平衡)が存在するということだが、これはその初期条件から導かれるものだ。
重力の加速度gが世界中で同じ値(地表で9.8)をとると、運動方程式によって唯一の均衡状態が導かれるが、その初期条件の必然性は証明できない。つまり初期条件が複数あると均衡状態も複数ある。たとえばgが20だったら別の均衡状態が存在するが、地球は存在しない。重力が大きすぎて、地球が太陽のまわりを公転できないからだ。
いま経済学者に「経済学の
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