有馬純 東京大学公共政策大学院教授
地球温暖化をめぐる国際的取り組みの中で長きにわたって産業革命以降の温度上昇を2℃以内に抑えるという目標が掲げられていることはよく知られている。2015年12月に合意されたパリ協定ではこれを更に進め1.5℃~2℃以内という目標が盛り込まれた。
筆者はかねがね2℃目標の実現可能性については強い疑問を抱いてきた。パリ協定に向けて各国が提出した国別目標(INDC: Intended Nationally Determined Contribution)を足しあげても2℃目標達成に必要とされる排出削減パスには遠く及ばず、2030年時点で150億トンものギャップがあるとの分析がある(この分析は特定の気候感度を前提としたものであり、相当議論の余地のあるものなのだが、ここでは深く立ち入らない)。問題はボトムアップのプレッジ&レビューに基づくパリ協定の元で各国がこのギャップを埋めるために目標を飛躍的に引き上げるか否かである。筆者は再エネのコスト低下等のポジティブな動きはあるものの、各国は温暖化防止だけを基準に政策を行っているものではなく、とりわけ今後、経済発展を目指していく途上国が温暖化防止に右へ倣えするとは想定しにくいからである。
本年2月、フォーリン・アフェアーズに「2℃ 目標の幻想―非現実的な気候変動目標の危険―(テッド・ノードハウス)」という興味深い論文が
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