神話の復興による成長戦略
死期の迫った農夫は、のらくら息子たちに、自分の葡萄畑に宝物を隠してあるといって死んだ。息子たちは、畑を隅から隅まで掘り返したが、宝物は見つからなかった。その代わりに、葡萄がよく実った。これは、イソップの「農夫と息子たち」という有名な寓話である。寓意は、人間にとって苦労こそが宝物だとされている。
この寓話、思想的に深遠な意味をもつものとして、ジンメルやベンヤミンといった哲学者も引用している。どこに哲学上の論点があるかというと、農夫の嘘は、事実として、息子たちに信じられたところである。原点における農夫の嘘は、息子たちにとっては、疑う余地のない歴史的真実だったのであり、そこには、嘘を真実として通用せしめるだけの父親の権威があったということである。
企業には、創業の神話、伝統、文化、風土、理念、哲学などと呼ばれるべきものがある。創業者や経営者の個人的確信ではなくて、それが組織化し、組織内で空気のように自然に共有され、呼吸され、信じられ、組織の所属員の行為を自然に律するものとなったものである。これは過去の成功神話への信仰なのだが、その信仰が企業の未来の成長への動因となっている。
かつての日本の企業では、頌歌を捧げるごとくに、社歌を斉唱したり、経営理念を御経のように唱えたりと、程度の差こそあれ、多分に宗教的雰囲気を醸していたものである。しかし、もはや、神話は失われた。どうすれば、神話を再興で
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