劣化した出版業界の卑しい言論:『憲法を百年いかす』
憲法を百年いかす (単行本) [単行本(ソフトカバー)]
半藤 一利 保阪 正康
筑摩書房
★☆☆☆☆
1月からのアゴラ読書塾では「平和憲法が平和を守った」という類のステレオタイプを脱却したいが、本書はそのステレオタイプの見本である。半藤氏は元文春の編集者なので「右派」だと思われているが、最近この2人の対談集は「極左化」してきた。
本書も最初から「憲法で2度と戦争しないことを誓ったので、それを百年守らなければならない」という結論を決め、それに合わせて歴史を語っている。2人とも憲法9条がどういう経緯でできたのかは知っているが、「できた経緯は問わない。日本から攻撃しなければ戦争は起こらない」という。北朝鮮から攻撃してきたらどうするのかは語らない。
こういう一方的非武装主義は、そう珍しいものではない。その極致は、半藤氏が世に出した森嶋通夫の「無抵抗平和主義」だろう。ソ連と戦争して死ぬより、無条件降伏してソ連の植民地になったほうがましだという。
1945年にも、日本の降伏があと数ヶ月おくれていたら、そうなった確率が高い。ソ連国内で2000万人以上を粛清したスターリンは、日本でも1000万人ぐらい殺しただろう。これは太平洋戦争の日本の軍民の死者300万人をはるかに上回る。
井上達夫氏の第9条削除論については、論理的には否定できないが「戦争の前段階には外交交渉があるので、そこで止めるの
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