もちろん、教育はしないでよいということではない。ただ、教育を改善すれば、社会問題が解決するという幻想を払拭したいと思っている。社会の閉塞感の原因のスケープゴートを教育にしてはならない。
ナシーム・ニコラス・タレブは、「反脆弱性 」(池田信夫氏や高橋大樹氏も大きく取りあげているが、私は教育の面から取り上げたい)で、
現代性の最悪の問題点は、ある人から別のある人へと脆さや反脆さが移転するという悪辣な現象にある。一方が利益を得ると、もう一方が(知らず知らずのうちに)損をこうむる。こういう状況は昔から存在していたが、今日では特に激しい。現代性がうまくかくしているからだ。(下P222)
と言っている。
これは企業、とくに大きな企業に勤めている人間なら、だれでも薄々気づいていることだと思う。自分の立場は決して実力ではない、たまたま20歳かそこらで勤めることができた企業の恩恵にあずかっているだけだ、と。これに形骸化した終身雇用という雇用の流動性のなさに恐怖心を煽られ、下りるに下りられないゲームとなっている。
お役所的な大企業は、「大雇用主」になって国家を掌握すれば、中小企業を犠牲にして利益を搾取することができる。だから、60万人もの従業員を雇う企業は、市民の健康を破壊しても責任は問われず、暗黙の救済保護で利益を得ることができるのだ。一方、美容師や靴屋のような職人にはそんな保護などない。(下P2
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