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アメリカズカップは1851年に始まった最古の国際スポーツ大会だ。ヨットレースとして世界最大規模。優勝しても賞金は出ない。カップと名誉だけだ。1988年、ニュージーランドのチームが本戦に初出場した年、僕は生まれた。

あるセーラーはヨットスポーツをこう表現する。「冷たいシャワーを浴びながら、百ドル札を引きちぎるような行為だ」。アメリカズカップでは、ライバルたちに少しでも優位に立てるなら、惜しみなく百万ドル札を引きちぎる。

この30年で、レースヨットは「空飛ぶ機械」に進化した。変革を推進してきたテクノロジーには目を見張るばかりだ。今では風速の3倍で移動する能力を持つ。

イノベーションが続いても、一つだけ変わらないことがある。帆を動かすロープを引っ張るには頑健な肉体が必要なことだ(今では制御システムを作動させる油圧を人間がつくり出す)。セーラーたちは「グラインダー=胡椒挽き」と呼ばれている。彼らが操る部品が、巨大な胡椒挽きのハンドルに見えるからだ。

2017年。チーム・ニュージーランドは秘密兵器を投入した。上半身の力を活用してきた常識を拒絶し、ヨットに自転車乗りを乗船させた。その名は「サイクラー」。男たちはジムにあるエアロバイクのような機械にまたがった。下半身の力を有効利用できれば、上半身が生み出すパワーを凌駕できる。この発想、仕組みでチーム・ニュージー

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