クラウド育児は悪なのか?海猫沢めろんが日本の育児事情に警鐘
気鋭の作家、海猫沢めろんが最新作『キッズファイヤー・ドットコム』(講談社)をリリースした。夢中になって読んだ。激しく胸を打たれた。これは、文学作品でありつつも、日本における育児論争に一石を投じる作品である。
物語のあらすじはこうだ。歌舞伎町のホストクラブの店長、白鳥神威がある日、帰宅すると家の前で彼を待ち受けていたのは、見知らぬ赤ちゃんだった。育てることを決意した白鳥はITを社長とともに、クラウドファンディングで赤ちゃんを育てることを決意する・・・。これだけ聞くと、トンデモ話のように思えるだろう。しかし、作品で盛り込まれているのは、現実社会で起こっていることだらけだ。ひとり親家庭、待機児童問題、クラウドファンディング、ネット炎上、自己啓発、意識高い系・・・。これらをパッチワークでつなげたような作品である。物語の中で、ホストと公開対談する荻窪リキは明らかに荻上チキがモデルだったりする。他にも津田大介、東浩紀、家入一真のような人も登場する。まるで現実の話のようだ。7月に娘が生まれ、絶賛育児中の私にとっては、深く考えさせられるものだった。
思うに、この本は出産・育児について語り合う際の踏み絵的な作品だと言えるだろう。この作品が問題提起しているのは、主に出産・育児における合理性と、規範(特に道徳的な、あるいは昭和的な)のせめぎあいの問題ではないかと私は捉えている。育児には、時間とお金が
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