東大法学部の「恥部」の精神分析:『ほんとうの憲法』
ほんとうの憲法: 戦後日本憲法学批判 (ちくま新書 1267)
篠田 英朗
筑摩書房
★★★★★
日本政府のエリートのほとんどが東大法学部卒なのは、世界でも珍しい現象である。それは彼らの偏差値が高いのだから当然だと思う人が多いだろうが、ほとんど偏差値の同じ経済学部はエリートになれない。経済官庁や中央銀行の幹部に(経済学の基礎知識をもたない)東大法学部卒が多いのは異常で、日本の経済政策が失敗する原因だ。
彼らがエリートになるのは、東大法学部が法解釈を独占しているからだ。公務員試験も司法試験も、東大教授の解釈を書かないと合格できない。それは彼らの解釈が正しいからではない。閣議決定がクーデターだという石川健治教授の解釈は、笑い話にもならない。彼が出世できたのは、東大憲法学の教義を盲信して復唱したからだ。
彼らの知的権威を支えるのは「戦時中に東大法学部は時局迎合しなかった」という神話である(経済学部は全滅だった)。その英雄が美濃部達吉だが、彼は明治憲法の「国体」を信奉し、GHQの憲法改正案にも反対した。彼の天皇機関説は、高等文官試験にも出題された明治憲法の「裏の国体」だった。
その弟子の宮沢俊義は、1930年代にはケルゼンに依拠して美濃部の天皇機関説を批判していたが、戦時中は時局に迎合して意味不明の講義をするようになった。日米開戦を「来るべきものがついに来たといふ感じが梅雨明けのや
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