現地知らずに中国を語る日本人たちにひと言①
かつて上海に駐在していた2000年の後半、中国国内の労働コストは急上昇していたが、まだ製造業は活況で、日系企業には多数の日本人駐在員がいた。当時、企業や業種にかかわらず駐在員の間で流行った言葉は「OKY」、つまり、頭の文字をとって、「お前が、来て、やってみろ」だった。
本社が現場の状況を理解せず、無理難題を吹っかけてくることを愚痴ったのである。それはそのまま、日本メディアへの批判にもつながっていた。
日本企業の本社は、日本にいて、日本の新聞やテレビが伝える中国に接し、それを鵜呑みにする。現地の駐在員が、その報道とは異なることを報告しようものなら、「日経にはこう書いてあった」「テレビのニュースでは・・・」と一蹴されてしまう。メディアへの信仰が強く、ガラパゴス化の進む日本社会においては特に、本社は駐在員の言葉を信用せず、「権威ある報道」に左右される。
そこで駐在員の不満は、現地にいる日本メディアの特派員に直接向けられる。「なんで正しいことを伝えないのか」「一面しか見ていないではないか」と。すると特派員はどう答えるか。理路整然と、説得力をもって反論できる記者はまずいない。同じことを繰り返すのだ。
「自分が正しいと思う記事を送っても、東京のデスクがボツにしちゃうんですよ」
「ああいうふうに書かないと、デスクが納得してくれないので」
私には責任逃れにしか聞こえない。信念がないのである。以前
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