【映画評】たたら侍
たたら侍 (朝日文庫) [文庫]
戦国時代末期の奥出雲。たたら村では、古来より、熟練の製鉄技術であるたたら吹きが伝えられていた。その技術を受け継ぎ、たたら吹きを取り仕切る村下(むらげ)の長男として生まれた伍介は、父の技術を継承するはずだったが、鋼目当ての山賊に村を襲われて以来、強くなって村を守りたいとの思いを抱く。商人から、農民でも侍になれる時代だと聞いた伍介は、村の掟に背いて、侍になるために旅に出る。しかしそこには、戦場の惨状と厳しい現実だけが待っていた…。
歴史ある出雲(現在の島根県)の地で製鉄技術・たたら吹きを継承することを宿命付けられた青年の成長を描く時代劇「たたら侍」。題材は、1000年錆びないとされる純度の高い玉鋼を生み出す、たたら吹き。それを受け継ぐ主人公はまだ若く未熟で、伝統の素晴らしさは肌で知っていても、あまりにも世間知らずだ。乱世の戦国の世で、力を得たいと願い、侍になりたいと切望しても、過酷な戦場の現実の前で身動きもできず、老獪な商人たちにいいように利用されてしまう。おかげで伍介が行くところ、次から次へとトラブルが起こり、それでも彼をいつも見守っている周囲のおかげで何とか生き延びている始末だ。こんなにもへたれで役にたたない映画の主人公はちょっと珍しい。伍介さえ動かなければ、すべての惨事は回避できたのではなかろうか…と思うと、共感するのは難しくなってしまう。およ
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