今年のForbes誌の長者番付で、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏が資産総額を204億ドル(約2兆2640億円)に増やし、3年ぶりに首位になった。彼がここまでリッチになった原因は何だろうか。その原因をアゴラ経済塾で使っているゲーム理論で考えてみよう。
ソフトバンクが2001年に通信事業に参入したとき、通信業界では誰も成功するとは思っていなかった。このころNTTはデジタル通信の世界標準だったISDNを使っていたが、64kbpsと遅かった。ADSLは1.5Mbpsぐらい出たが、電話局の中にルータを置かせてもらわなければならない。当然NTTは拒否したので、ADSL業者は経営が行き詰まった。この状況を単純化すると、次のようなマトリックスになる(数字はSBの利益)。
両社ともISDNを使っていると、現状維持で利益は1(右下)だが、どっちもADSLを使うとブロードバンドになって利益は3(左上)になるとする。このゲーム(stag hunt)のナッシュ均衡は左上と右下の二つあるが、現状でSBだけADSLを売り出しても、誰も使ってくれないので赤字になる(右上)。
そこで孫氏は総務省に乗り込んでNTTの回線の開放を求め、モデムを無料でばらまくなど、常識はずれの営業をやった。これは普通ならNTTに意地悪されて終わりだが、孫氏はあおぞら銀行に出資した1000億円の株式を売却して、資金をADSLにつぎ込
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