猿とワイドショーはどっちが賢いか:『理性の起源』
理性の起源: 賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ (河出ブックス 101)
網谷祐一
河出書房新社
★★★★☆
今週のブログマガジンにも書いたように、最近の実証研究では人間と類人猿の差は不連続なものとはみられなくなっているが、理性と感情のバランスは大きく違う。たとえば今すぐもらえる2個の餌を我慢すると6個の餌をもらえる実験をすると、猿は何度やっても8秒と待てない。目の前に餌があると、理性で欲望をコントロールできないのだ。
豊洲より築地のほうが危険であることは明らかなのに、そういう合理的な判断ができず、いつまでも無関係な石原知事の「責任」やら「都政のドン」の疑惑ばかり論じているワイドショーは猿みたいなものだが、理性が進化において有利だったかどうかは不明だ。
本書の紹介する実験でも、論理的な推論が進化で有利になる根拠は見出せない。それは科学技術や事務作業には役に立つが、遺伝的な能力ではないので学校で訓練する。東大に受かる学生はそういう特殊な推論能力をたまたまそなえた少数の個人で、それは人格とは無関係だ。人格的にいい人は多いが、科学技術の役には立たない。
進化で有利になるのは、他人と同調する能力である。人類は集団でないと生存できないので顔や名前を覚えて仲間を同定する能力が重要だが、仲間が100人を超えると名前を覚えることが困難になるので、敵と味方を識別する合言葉が必要になる。
そ
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