日本政府はデフォルトできる:『金利と経済』
金利と経済―――高まるリスクと残された処方箋
翁 邦雄
ダイヤモンド社
★★★★☆
アベノミクスや「異次元緩和」は壮大な空振りに終わったが、これは著者を含めてほとんどの経済学者が予告してきたことだ。したがって本書の前半はこれまでの標準的な経済学の解説だが、後半はちょっとトーンが変わっている。それは世界的に財政政策の時代に入ったという認識だ。
大学で教わる「ケインズ経済学」は1980年代に死んで、20世紀末にケインズ政策を採用する先進国は日本以外になくなっていた。財政政策で「雇用を拡大」するというのは幻想であり、長期的にはインフレをもたらすだけだ、というのが理論的にも現実的にも正しく、経済の微調整は金融政策でやることが常識になった。
しかし2000年代に日本がゼロ金利に突入して金融政策がきかなくなり、量的緩和も効果がなかった。2008年にアメリカが金融危機に陥って非伝統的な金融政策を採用し、大規模な財政出動が始まった。政府の役割は長期的な成長の維持で、景気循環は金融政策で調整する、という常識が変わり始めたのだ。
しかしケインズの時代に戻ったわけではない。財政政策で持続的に成長率を上げることはできないという結論は変わらないが、従来の財政と金融の役割を見直し、政府と中央銀行のバランスシートを統合して考える時代になった。ここでは中央銀行の本質的な役割は「最後の貸し手」機能だけだから
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