岩波「思想」を今日読む意義
「岩波(書店)の没落」あるいは「岩波知識人」の衰退が指摘されて久しいが、私は実は高校を卒業した頃(2011年)から渡英するまではずっと岩波の「思想」を購読していた。私が「アゴラ」に寄稿している記事を読んで下さっている方は、恐らく私が「保守的」で所謂「リベラル」に対して批判的な傾向を隠していないことを察知しておられる方が多いであろうから、これまでずっと岩波の「思想」を読んでいたなどと言えばあるいは驚かれるかもしれない。
確かに岩波の「思想」で扱われるテーマは圧倒的に大陸哲学に偏っており、特にフランスのポストモダン哲学の影響が非常に強く、一見すると不用意に晦渋な文章が並んでいるようにしか見えないかもしれない。また、「思想」の思想的傾向はどう見ても「保守的」ではなく、「権力からの解放」をテーマにした「自由への戦い」という一種の批判的伝統に連なる系譜の中にあるのも確かだろう。
だが、そうは言っても岩波の「思想」の記事を書いておられるのは長年学問を積まれてきた名門大学所属の碩学者ばかりである。思想的傾向性が性に合わないとしても、否、岩波知識人の思想的傾向に反感を持つ人であればこそ、敵を知ることは重要であると私は思うし、その意味を含めて大抵の記事は一読の価値のあるものだ 。
藤本一勇氏の「テクストのデモクラシー」
そんな中でも私が読んだ記事の中で私にとって最も輝いて
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