転勤は少子化の原因ではない — 牧野 雄一郎
なぜいま転勤が問題となっているのか
電通の事件を始めとして働き方の見直しがこれほど盛り上がりを見せているのは面白い時代になったと思う。残業の悪玉論に続いて、最近は「転勤」に対する風当たりが強い。ネットニュースやアゴラでも何件かの記事で転勤問題が話題になり日本的な働き方として今後も意見が続きそうなので雇用という面から意見を述べたい。
私は以前に大企業で勤めており、自身も転勤を経験したし周囲で様々な転勤を見てきた。その見地から言えることは少なくとも今の日本企業に課せられた制約からして「転勤は残業とともに必要な生命線」であるということだ。
転勤は少子化の原因ではない
一部のニュースやブログ記事では「転勤を理由に出産を諦めた、結婚を諦めた」という意見が多いと言われている。同時にこれらの意見の大半は転勤による「単身赴任」を問題視している。単身赴任で(通常は)夫が遠隔地に行き、残された妻が子育てしにくいということだ。あたかも転勤を全面禁止すれば結婚率も出産率も上がるという印象だ。しかし本当にそうだろうか。
最新の国勢調査によれば全国の単身赴任者数は70万人となっており、労働者の約2%と言われている。絶対数としては多いが、実態を見るとその殆どは40歳以上の単身赴任者が7割を占めている。出産世代の25〜39歳の単身赴任者数の合計は9万人となっており、同世代人口の0.5%程度だ。この単身赴任がなく
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